りんご栽培は矛盾の克服

りんご栽培は矛盾の克服だと先輩に言われたことがあります。
当時の僕には何を言っているのだろう?そう思った記憶がある。
りんご栽培に携わり15年以上が経ち、収納した時に感じたことや、教えていただいたメモを読み返してみるとその当時に解らなかったことが今では少し理解できたように思えます。

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沢山花芽を付けるための剪定
この時期りんご農家は剪定作業に勤しむ季節です。りんごを毎年のように収穫し販売し、そのお金で生活していかなければなりません。毎年毎年りんごを安定的に実らせるということは非常に難しく、それを実現するためには剪定作業は必須となります。果樹栽培剪定の中でも最も難しいとされるりんごの剪定。篤農家と言われる人や、剪定の先生と言われる人はやはり毎年安定してりんごを生産しているように思います。
剪定の基本は「木を健全に維持すること」
ただ木を元気に維持するだけならとても簡単。しかし木を健全に維持しながら“美味しいりんご”を沢山生産していくということに剪定の技がある。りんごを沢山実らせるには沢山の花芽が必要。しかし花芽が沢山つくということは木が弱ってきたということ。沢山花芽をつけた木は弱り病気になりやすくなったりと管理が大変。
樹勢の強い木は逆に花芽が付きにくく、さらにはこういった木に実ったりんごにはコクがない。

ある程度弱らせながらもしっかり樹勢のコントロールするというところに剪定の技がある。


沢山花芽がついたら今度は沢山摘花する
たくさんの花芽をつけるために剪定したはずなのに、沢山咲いた花を今度は摘花するという矛盾。りんごの場合、4つの花株のうち1つの花株に選抜して最終的に実らせるのが基本。100個のりんごが欲しいのなら400個の花芽が必要というわけだ。そうすることで、その年のりんごの品質や、次の年以降の花芽の着生がよくなるというデータもある。過度に実らせ過ぎると、確かに次の年の花芽の付きはよくないし、その年のりんごの肥大は悪い。


美味しさの証は葉っぱなのか?
近年生産現場では、「葉取らず栽培」が劇的に増えつつある。葉取らず栽培とは、りんごの着色管理(葉取り、玉回し)作業を行わない栽培方法。太陽の光をたっぷり浴びた葉が作りだす養分を十分に蓄えた美味しいりんごが出来るという。葉を取らないため果実表面に色むらができたりするのも特徴。
しかし“美味しいりんご”を作りたいから葉取らず栽培をしている生産者は本当に極々少数だと感じている。生産現場では秋の農繁期の人手不足が深刻で秋の着色管理をしなくても良いからという理由だけで葉取らず栽培が急増している。生産者の立場からすれば全て手作業の着色管理をしなくても良いというのは多大なメリットでもある。
私自身、沢山の生産者のりんごを食べてきたという自負はある。その中で美味しい葉取らずりんごだなと客観的に思ったのは数名の生産者だけ。やはりその方たちは“美味しいりんご”を作りたいからという理由で葉取らず栽培に取り組んでいた。葉取らずりんご=おいしいりんごとは必ずしもならないが消費宣伝PRするには色むらのあるリンゴというデメリットをカバーしなければいけないので「美味しさ」を強調したPRとなってしまう。美味しさを追求するために葉取らず栽培に真剣に取り組んでいる生産者からすれば、省力のためだけに葉取らず栽培をしている生産者と同じ葉取らずリンゴとして陳列してほしくないはず。葉取らず栽培だからおいしいとPRするが現場では省力のための栽培方法という矛盾。


価格高騰による生産意欲の低下
昨年産のりんごは全国的に品薄だったため、産地市場での取引価格はずっと高値が続いている。B級品やC級品といった下位等級品でさえ聞いたことのないような高値での取引となっている。生産者側からすれば近年の資材高騰で生産経費が上がっている中、収穫量が少なかった昨年のような年は少しでも高値で取引されなければ赤字となってしまう。
ここ数年りんごの取引価格は私が始めたころに比べると1.5倍~2倍ほど高く市場取引されているように感じる。先述したように下位等級品でさえ高値で取引されているため、高値慣れした生産者の”いいりんごを作ろう”という意識が薄くなってきている生産者も多い。”いいりんご”でなくとも高値で取引されているのだから。
豊作祈願はするが、豊作貧乏という矛盾。

 

「おいしいりんご」という言葉
先日、りんご仲間の先輩が「最近の剪定会では”おいしいりんご”という言葉が聞かれなくなった」ということを言っていた。確かに。
りんご生産者である以上、おいしいりんごをどこまでも追求するのは当然だと思うが最近はそうした生産者に出会うことは少なくなったように感じる。

ただ、私の周りには「おいしいりんご」を追求している仲間や先輩が多い。改めて人に恵まれていると感じる。そういった方とのりんご談義はとても楽しくとても勉強になる。時間を忘れるほどりんご談義に花が咲きとても有意義な時間を過ごしたと感じる。そうした時間を大事にしたい。

矛盾の多いりんご産業だが、生産者はおいしいりんごを追求し、豊作でも対価で取引されるもっともっと整合性のとれた産業になってほしいと願うばかりだ。

剪定鋸と早い春

お疲れ様です。年末年始と体調を崩し強制的に長期休暇となりしっかり寝正月を堪能した園主です。おかげで体調も万全。

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剪定を楽しめるか?作業になっていないか?
さて、収穫作業も終わり、発送作業も落ち着いてきたこの頃ですが、園地での剪定作業も始まりました。例年であれば雪藪を漕いで園地まで歩いていくのですが今年は暖冬ということもあり今までに経験したことのないくらい雪が少ない。この時期例年であれば80センチほどの積雪があるのだが、今年は10~20センチほど、、、あまりにも少なすぎて少し不安。
園主が剪定作業をする上でのこだわりの一つが剪定道具。就農した年から使用している職人さんが目立てしてくれた鋸や鋏を使うこと。しかし、11月上旬突然その職人さんが亡くなった。昔気質の職人を絵にかいたような方だったが私にはとても気さくでたくさんいろんな事を教えてくれた人。当農園のリンゴを作るうえで欠かせない人の一人だったが天国へ旅立ってしまった。もっともっといろんな話を聞きたかった。もっともっとあなたの目立た鋸を使いたかった。でもいまはもう叶わない。使い込むほどに切れが良くなるあの感覚、シュッシュッと切れるあの音、鉋をかけたような切り口。楽しんで剪定出来ていた。毎日剪定作業を終えて帰ってくると鋸くずを取り、錆びないようにオイルを塗ったりと手のかかる道具たちだったがその分愛着も半端ない。昨年のように楽しめて剪定出来ているかというと、、、。
しかし、剪定作業はしなければならない大事な作業。今まで使用したことのない替え刃式の剪定鋸を使用しながら約1/3終了。

巷には、たくさんの果樹剪定用の鋸がある。ネットを調べれば何種類も。私もいくつかの商品を購入しその中で一番しっくり来たものを使用しているわけだがやはり職人さんの目立てた鋸に慣れてしまった私にはどこか違和感がある。現在使用しているものも決して切れないというわけではない。むしろ新品ならより切れているのかもしれないが、切れ味の持続性がない、、、だから替え刃式。少し残念。

縦引き用、横引き用などの大工用の鋸とは異なり、果樹用鋸というのは木の繊維に対して斜めに切ることもあったり、節が多くかたい部分と柔らかい部分が混在している木なので縦引き、横引き両方のいいとこどりの刃でなければならないと思っている。それらを可能にしていたのが職人さんだったように思う。今となってはあの感覚で剪定出来ないと思うと心から楽しめて剪定出来ていないように思うが、暖冬傾向の今年は春の訪れが早い予報なので早い春に備えてしっかり計画的に剪定進めていこうと思う。

今年の振り返り、反省色々

お疲れ様です。11月上旬から主力品種サンふじの収穫が始まり。日中は収穫、夜は荷造り作業という一年で一番忙しい日々を過ごしておりました。今日でようやくご予約分を発送し終え、少しだけ余裕のある日常に戻りつつあります。

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今年の振り返り
記録的に早い消雪、記録的に早い開花となりあわただしい幕開けとなった春。生育が早くなると遅霜の影響を受けやすく、少なからず当農園も被害を受けてしまった。しかし開花量は十分、着果量も十分、肥大も良好、今年はいい出来秋を期待できそうだと思っていた夏、30度以上の日が一ヶ月以上も続き最高気温が39.3度、、、日当たりのいい果実は焼け焦げ、畑の土は干ばつ状態になり、肥大がストップ。まあ、それでも秋になり早生品種、中生品種と収穫をしていると爆弾低気圧、、、幸い風当たりの強い園地の収穫は終えていたため落下被害は1トンほどで済むが、強風が続いた時間が長かったため枝に擦れ傷ついたりんごが多くなってしまった。サンジョナや王林の2品種は収穫前落果が1割。主力品種のサンふじは、果皮のひび割れが酷かった。
そして何よりも全品種、鳥被害が多かったというのが今年の特徴。

やっぱり信用が大事だよね
今年度よりBtoB取引を始めました。というより今までたくさんの業者さんからお声掛けいただいておりましたがすべてお断りしてきましたので今年初の試み。単価的にも満足のいく取引でさえ断ってきました。なぜかというと当農園のような個人農家が収穫できるリンゴの量なんて限られています。今まで定期的に購入していただいたお客さんのリンゴを単価がいいからと言ってそっちに行ってしまっては今まで当農園のリンゴを楽しみにしていたお客さんに申し訳ないという気持ちが強いから。こんな頑固な園主だからなかなか稼げない、、、。
しかし、リンゴ農家仲間の紹介ということもあり少量だが今年度出荷することにした。リンゴ農家仲間の顔を立てたというわけだが、来年以降はどうしようか?悩んでる。個人農家と業者、販売店というお付き合いになるわけだが私としてはサンふじの贈答品は例年完売しているので10月の早生物のリンゴから出荷したいという希望も伝えたはずだがメールしても返信はなく、10月下旬急に連絡がありバイヤーさんを連れて園地に行きたいと、、、10月下旬といえばリンゴ農家の超農繁期。この時期急に来るということが農家にとって負担になることが販売する側はわかっていない様子。実際、今年は2品種90キロ出荷したが、出荷する手間は個人宅配の倍以上かもしれない。やはり私にはBtoBというのは向いていないと実感。本来1度2度と会う度に信用だったり信頼関係が出来てくるものだと思うのだが、今年はそれを築くことができなかった私の未熟さもある。反省。

 

お客様は神様なのか?親しい友達くらいがちょうどいい
今では全国にたくさんのお客さんがいます。本当にいい人たちに恵まれリンゴを購入していただいていますが、中には”お客様は神様”という態度で電話してくる人もいる。残念だったのがその人は同じ農業者だった。他県で農業法人をされている方でここ数年リンゴを購入いただいている方。簡単に言うとその方のお口に合わなかったという電話だったが最後にはおいしいリンゴは、、、、という風に本業の私にリンゴについてマウントを取り始めた。さすがにこれにはカチンときた。反省。
お客さんに選ばなければリンゴを購入してもらえないのは重々わかっているが、ただ生産者側もお客さんを選ぶ権利はある。

私はお客さんとの立場は対等で「親しい友達くらい」の関係性がいいと思っている。実際そういう関係性が築けているなと感じるお客さんが何人もいる。もちろん直接会った方ばかりではなく、一度も会ったことがない人のほうが多い。
今年、いろんな意味で救われた出来事がある。
2~3年前から当農園のリンゴを購入していただいてる方から突然SNSメッセージがあり「当農園のリンゴで作ったタルトを贈りたい」と。リンゴを購入していただいているのにわざわざタルトを作って贈ってくれるという。心身共に疲れている時期でこのメッセージを見ただけで元気がでた。数日後予定通りタルトが到着。売り物かというほど綺麗な見た目とリンゴの味もしっかりと感じられる程よい甘さのタルトが体に染み渡った。何よりもその人の気持ちがただただ嬉しかった。今年のリンゴは夏場の猛暑や日焼けの影響で品質のいいものが少なく、気落ちしてストレスも溜まっていたころの出来事。
本当に救われました。ありがとう。
勝手に親近感が増し、勝手に「親しい友達くらい」に思っています。

 

贈答品完売と信頼関係
お陰様で、今年度の贈答品は予約の段階ですべて完売となりました。現時点で贈答品をご注文いただくお客様には下位等級の「家庭用品(色むらや傷あり)」しかありませんと伝えると、”味が変わらないならいいよ”と言ってくれるお客さんがほとんど。先に記述したように今年は猛暑の影響が大きく贈答品も例年よりも少し少なかった旨を伝えると直ぐに理解してくれ、”大変だったね”と労ってくれる。規格を変更を快諾してくれるお客さんとの間には信頼関係が出来てきていると感じる。しかし私としてはお客様の本来のご注文にお応え出来なかったという罪悪感が少なからず残り、来年こそは!と心に誓うのであった。

今年度から当農園も商品価格の値上げに踏み切りました。数年前からの肥料費、農薬費、資材費、人件費と必要経費が上がって、苦渋の決断でしたが商品価格を見直すことになりました。いろんなものが値上がりしその中で毎年当農園のリンゴを購入されているお客さんには大変申し訳ないと思いつつ来年以降も継続してリンゴをお届けするためには価格改定せざる得ませんでした。値上げしたから少し注文件数は減るだろうと思っていたが、現時点では昨年並みのご注文件数。本当にお客さんに支えられているんだなと実感。
あっという間に12月。リンゴの発送も先が見え始めてきたので、そろそろ畑へ行こうか!

猛暑からの低気圧、そして鳥さん

お疲れ様です。
ここ青森もようやく秋めいてきて、暑がりの園主でも股引きを履いて畑へ向かう季節となりました。

裸になって作業もしたいと思っていたほど暑かった夏。果実の日焼けに悪戦苦闘した夏を乗り越えてやっと気温も下がりこれ以上何もなければいいなぁと思っていたら、、、

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爆弾低気圧
「今年は台風が来ないな〜」なんて休憩中話をしていたら10月5日に低気圧が青森県上空にやってきた。夜中から明け方まで強風が続き収穫前のリンゴの落果してしまった。幸い当農園の落下被害は600~800キロほどで済んだが近所の畑ではうちの10倍ほど落果したそうだ、、、。
園地の場所によってこれほどまで差が出るのか。落下被害ばかりではない。長時間にわたり枝が揺れリンゴが擦れ傷がついたりんごも多い。市場出荷ではランクが一段も二段も下がってしまう。

幸い当農園では、多少の傷は気にしないというお客さんが多くある程度は宅配りんごとしてさばけるが、春からたくさんの苦難を乗り越えあと少しで収穫だというりんごが傷ついているのを見るとストレスが半端ない。

 

鳥の被害が深刻
夏場の猛暑の影響なのか?今年は山にも影響がありドングリが不作だという。早い時期から熊さんが人里付近まで来るようになり、自家消費用に植えてある桃も一個残らず熊さんに食べられてしまった。全県的に今年は熊さんの出没件数も例年になく多く発生しており、人的被害も報告されている。

 

低気圧や熊さんの被害も落ち着いたころ、周りの農家から「鳥の被害が深刻だ」という連絡があった。確かに管理作業をしていると例年に比べ鳥が突いた跡が今年は多いなと感じている頃だった。葉取作業をしている時期にちらほら見かけていた鳥が突いたりんごだったが、玉回しの作業になるとかなりのリンゴが突かれている、、、。毎年少なからず突かれてはいるもののここまで突かれたことは今までにない。慌てて防鳥テープを園内あちこちに張り巡らせたがあんまり効果がないということも知っている。でもやらないよりはマシだと自分に言い聞かせ今日も防鳥テープを張ってきた。
何が厄介かというと、突かれた個所から腐敗していく為、腐敗のひどいものは破棄するしかない。春から手塩にかけてきたリンゴが野鳥に一突きでもされようものなら商品としての価値がなくなるというのが一番の問題。

 

鷹を模したカイトも一時期流行したが今では一つも見かけなくなった。一番効果的なのは防鳥網を園地全域に張り巡らすのが一番だが、広大な園地に網を仕掛けるのは労力的にもコスト的にもとても現実的ではない。

こんな年は早く収穫することが鳥被害を軽減させる唯一の方法なのだが、あと数日で完熟するとわかってるりんごをここまで来て未熟なまま収穫する事は出来ない。経営者としてこの判断は間違っているともわかっているが、生産者としての判断は間違っていないはず。「昨年よりも美味しいリンゴを」をテーマに毎年掲げてる当農園としては美味しさだけは妥協出来ない。
お客さんも毎年楽しみにしてくれているという期待感もヒシヒシ伝わる。

あと数日で当農園の人気No.1サンふじの収穫も始まろうとしている。これ以上、被害が出ない事を祈るしかない。
鳥被害には、コレは効果あるというものがあれば教えて欲しい。

ロイヤルカスタマーに支えられ

お疲れ様です。超農繁期に突入です。
りんご農家は主力品種ふじの収穫が始まる11月が一番忙しいと言われますが、実は10月が一番忙しいです。中性種の着色管理や収穫に加え、ふじの着色管理も進めなければ11月の収穫に間に合いません。私の場合、それらに加え日没後の荷作り作業、それが終わったら事務作業と働き方改革とは真逆の生活となります。

現代社会では物やサービスが溢れており、情報収集の手段も多様化し圧倒的なスピードで情報が拡散され折角作ったものが模倣される時代でもあります。
沢山の農家さんが直接消費者と繋がり、簡単に販売できるという利点もあります。SNSの進化普及と共に情報のスピードというのは格段に早くなり、伝えたい事や物がうまく消費者に伝わらず沢山の情報に埋もれてしまうという事もあり、SNSの使い方は年々難しくなってきたなというのが実感としてあります。

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誰に向けての情報発信なのか?
仕事柄、園主のSNSフィードには沢山の農家さんの投稿が流れてきます。農作業の様子だったり、収穫したりんごだったり、、、、。その人が誰に向けて投稿しているのかはわかりませんが、当農園のSNS等は既存のお客さんへ向けて情報発信をしています。新規顧客開拓のために情報発信してはいませんが、それでも少なからず新規顧客獲得には繋がっています。ただあくまで既存のお客さんへ向けた投稿をしているだけ。一個のりんごが出来るまでの作業内容をメインに毎年ずっと辞めずにやってきた。ブログから始まり、facebookInstagram、Threads、note。ブログなんかは投稿頻度は低いものの、毎日数十人も閲覧しているようでこんな拙い文章のブログでも投稿を楽しみにしているんだなと嬉しくも思います。

 

ロイヤルカスタマーという存在
農作業中にはいろんなラジオを聴きながら作業をしているのですが、先日聞いたラジオで「ロイヤルカスタマー」についての話題があり、とても興味深かったので自分でも少し調べてみた。

 

 

ロイヤルカスタマーとは
ロイヤルカスタマーと似たような言葉に「優良顧客」があります。違いを理解することで、ロイヤルカスタマーについても正確に定義できます。

ロイヤルカスタマーの定義
「ロイヤル(loyal)」とは「忠誠心」、「カスタマー(customer)」とは顧客を意味します。つまり、「ロイヤルカスタマー」とは、商品やサービス、企業、ブランドに対して愛着や信頼を持っている顧客のことです。具体的には、商品やサービスをリピートして利用している顧客で、企業のファンのようなヘビーユーザーを指すといってもよいでしょう。

 

 

ネットで言葉の意味を調べているうちに、沢山のお客さんの名前が頭を巡った。当農園には沢山のロイヤルカスタマーと言われるお客さんがいる事に気づいた。


◦毎年のようにりんごを購入していただいてる他に、沢山のお客さんを紹介してくれる。
◦毎年何時間もかけてわざわざりんごを買うためだけに来てくれる
◦積極的にSNSで紹介してくれる


ここ数年は毎年のように新規のお客さんが増えてきている。SNSを利用し広告も出したりしてはいるが、「〇〇さんから紹介してもらいました」と一文添えられた注文書がよく届く。見しらぬ土地でりんごの話題となり、きっと当農園のことを紹介してくれたんだろうと。

 

例年であれば、8月20日頃にお客さんへDMを郵送しご注文受付開始となるのだが、一日早くオンラインショップのカートは開けるようにしてある。これはスムーズに受注できるか?最終確認のために一日余裕を持って開けるようにしているのですが、何もこちらからアナウンスせずともその日に数件の注文が入る。これは毎日毎日オンラインショップを確認しているからに違いない。逆の立場で考えるとなかなかの労力だと思う。そこまでして毎年楽しみにしていただいていると思うと、絶対に期待以上のりんごをお届けしたいと思う。それが私の出来る唯一の恩返し。

 

美味しさの先にあるものは
「美味しい」という言葉は溢れている現代において、私の考える本当の美味しさは”お客さんとの信頼”の上にあるのかもしれない。そう考えるようになってきた。

潜在顧客よりも、見込み顧客よりも、新規顧客よりも、リピーター、よりもロイヤルカスタマーと信頼度が高くなってくる。本当の信頼を得るためには時間がかかる。その反対に信頼を無くすには一瞬。
話は変わるが、私の同級生ですし職人をやっている友人がいる。その彼はたくさんの修行をしてきて、数年前にようやく自分の店をオープンさせた。決して広くはない店内だが、平日でも満席、週末はなかなか予約は取れない地元では一気に人気店に急成長した。やっぱりそれは大将の人柄や今まで築いてきた信頼があるから。もちろん味は言うことなしという前提。業種が違えど彼に学ぶ事は多い。私もそんな彼のお店にとってのロイヤルカスタマーだろう。

 

初めての経験
当農園は地元の直売施設にも少量ながら出荷をしている。その直売施設ではバーコードに生産者の名前が記載されていて誰が生産しているのかということが分かるようになっている。基本的に規格外品を出荷しているのだが、今では指名買いいただくまでになったが、そこでの常連さんがわざわざ名前からネット検索し当農園までお越しいただいたことがある。毎年毎年、産直施設で指名買いしていたそうで、いつかは私に会いたいというお言葉までいただき、先日お会いすることが出来た。生産者としてこんな嬉しい事はない。私に会うことが夢だったとまで言われ私の作ったりんごがここまで人の心を動かすことが出来たという実感と今までやってきたことが間違ってなかったという確信を得た出来事でした。

 

今まで沢山のお客さんにお会いし、まだまだ直接お会いしたことないお客さんも多いがロイヤルカスタマーと言われるお客さんには直接お会いし「ありがとう」と一言直接伝えたい。

「美味しい」は難しい

お疲れ様です。9月入り朝晩は涼しくなるのかと思いきやまだまだ残暑は厳しそうです。夏バテ継続中の園主でございます。

 

さて、今年の夏は日本全国酷暑となりました。「青森の短い夏」と言われるように本来ならここ青森の夏は終わっているはずですが最高気温は未だ30度オーバーの日々。最高気温が30度ならなんだか涼しい日にさえ思えてしまうほど、今年の夏は暑かった、、、というより酷かった。

 

過去最高を更新
八月は平年に比べ平均気温が4.4度高く、最高気温が30度を超える日が30日、、、ということは八月はほぼほぼ毎日、、、。8月10日に至っては39.3度という全国ニュースになるほどに。晴れが続き、降雨がなかったため畑は干ばつ状態。なかなか雑草すら生えてこないほど乾燥してました。

こんな状況だったため、早生品種を中心に日焼けしたりんご。実りながら茶色く変色し腐敗していくという、、、なんとも恐ろしい。基本的には30度を超えるとりんごの日焼けするリスクは高まると言われていますが、今年は30日以上もさらされたもんだから当然と言っては当然。

 

早生品種の代表格「つがる」の将来性は?

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時期的にも早生品種「つがる」の着色管理をしていた時期なので、それが逆に仇となり日焼けを助長させてしまった。しかし、早生品種から仕事を進めていかいとこれから始まる主力品種「サンふじ」等の仕事が遅れてしまうので作業の手は止められない。りんご農家なら大体こんな心境だろう。
現在、つがるの収穫のピークとなりJAなどの集荷場での生産者の会話を聞いていると「来年つがるの木は伐採する」という生産者の話も少なからず耳にするようになってきた。地球温暖化の影響なのか?詳しくはわからないが、気温が上がってきているのは事実。気温が高いことで、着色不良果も多くなることも予想される。そうなると確かにここ青森でも早生品種「つがる」の栽培は厳しそうだ。今ではふじに次いで生産量第二位の「つがる」がきっと数年度にはランクダウンしそうな雰囲気。
しかし、それに代わる有望な品種がなかなか無いのも現状。他県ではこの時期の最新品種等たくさんあるようだが、ここ青森では栽培すらできないという決まりがある。早生品種に関しては収穫期の気温も高いことから、美味しいだけではなく日持ちのする新品種を願わずにはいられない。欲をいえば日焼けしにくい方がいい。

 

りんごにこだわらない方がいいのか?
収入面、リスク分散、作業面、、、効率等考え、早生品種、中生品種、晩生品種と作付けしているわけですが、8月から9月の早生品種を全て辞め、他の果樹にシフトチェンジする時期なのかもしれません。福島や山形のりんご生産者のように夏は桃、秋はりんごと複数の果樹を栽培した方がいいのでは。実際毎年のように福島のりんご生産者仲間から贈られてくる桃は絶品。ブルーベリーなんかも魅力的。

 


「美味しい」は難しい
当農園でもつがるの収穫真っ最中ですが、宅配りんごのトップバッターなのでとても気を遣う。早生品種の欠点でもある「日持ち」。完熟してしまうと当日は美味しいのに数日経つと食感が悪くなってしまう。宅配りんごを始めた当初は「美味しい」を味わってもらいたいと思い完熟つがるを送ったら数日後には数件のクレーム。確かにその品種の特徴や欠点等何も知られていなかったので当然ですね。
「美味しい」の基準も人それぞれ。甘さに重きを置く人、酸味、食感、果汁の多さ見た目、五角形グラフのように綺麗な五角形が数値化されれば一番わかりやすいが「美味しい」の基準はとても曖昧。生産者がいくら美味しいと言っても消費者が美味しくないといえばそれは美味しくないということになる。
今年はこの気温の影響もあり、着色不良や果肉の硬さに影響が出てしまった。しかし好天に恵まれ、降雨も少なかったため味の濃さは近年稀に見る出来だと自負はしているがお客さんにはどう反応するのかドキドキ。今日、ご予約いただいてある第一便の「つがる」が発送された。関東だと明日お客さんのお宅に着くはず。「美味しい」の評価はいただけるか?それともお叱りのお言葉をいただくのか?毎年この時期は胃がキリキリとする。そのくらい緊張感を持って今日も荷作り作業をしてきた。

異常が通常に

6月の健康診断で胃の再検査をする様言われ、本日人生初の口から胃カメラをやった園主です。口からの胃カメラは苦しいと聞いていたがこれほどまで苦しいとは、、、。そんなことより結果異常無しということでホッとしております。


猛暑酷暑
全国的にも暑い夏だった今年、ここ青森も連日の様に猛暑日が未だに続いております。
先日は、39.3度と北国とは思えない気温を記録しました。今まではお盆を過ぎると風が変わり気温も下がり始めるのですが今年はまだ夏真っ盛りのような天気。

 

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日焼け
連日の猛暑に加え、三週間程降雨もなく畑は超干魃状態。ある程度、干魃には強いと言われるりんごの木でもだいぶ苦しそう。
35度を超える日差しにはりんごも日焼けし茶色くなってしまった果実もたくさん。
この時期、着色管理や垂れ下がった枝の支柱入れ等の作業をしたいのですが、こういった作業をすれば日焼けを助長してしまう。作業は進めたいけど、日焼け果は増やしたくない、なんとももどかしい、、、。


猛暑大好き?
畑には連日猛暑でイキイキとしているものいます。この時期の主要害虫「ダニ」。
1ミリにも満たない小さな小さなダニですが、旱魃や猛暑が大好き、、、ということで今年は大発生、、、大事な大事な葉っぱを吸汁してしまう、とても厄介な虫。専用の薬剤を散布すれば一旦はいなくなるものの、また直ぐに発生しやすい天気。
ダニ専用の薬剤は他の殺虫剤に比べ高価なものも多く、安易に使用するのは避けたいところ。しかし暴発してから完全防除するのも難しい。天気以外にも園主の頭を悩ませている。

 


異常なほどの値上げラッシュ
農業にとって異常なことといえば天気だけではなく、資材や肥料、農薬、運賃などの値上げも止まりません。肥料の値上げに関しては以前のnoteを参照↓

https://note.com/satofarm/n/nab37e5a208fc


ここ数年、資材関係の値上げも止まりません。10年前から比べると10キロ製品を作るのにかかっていた資材費が80円ほどUP、、、。運賃に関しても数百円UP、、、。りんご農家の使用する機械に使われるガソリンなんかは言わずもがな。それでもりんごを作り続けていかなければならないので、今年から宅配りんごの値段を改定させていただきました。お客様の負担が増えてしまうと思うとなかなか改定出来ずにいましたが、昨今の値上げラッシュにはとても現状の価格では合わなくなってきました。運賃に関しては昨年、大幅な値上げが予想されていましたが、運送会社さんと話し合いなんとか今まで通りの価格で契約することができました。資材に関しても、新たな資材屋さんと契約することで商品価格を少しでも抑えることになりました。

今までは異常だと思っていた天気がこれからは通常になり、現在異常だと思っているいろんな物の値上げにも慣れ、これからは常に「異常」になっていくのでしょうか?