水不足のりんご園と夏休み

お疲れ様です。記録的な消雪だった今年、雪解けが早く気温も高く推移したため例年よりもリンゴの生育が早まり、開花も早く、落花日も早かった。昨年の猛暑や干ばつの影響もあり、全県的にリンゴのカラマツ被害が深刻。いろんな要因が重なり不受精果となるのだが、特に主力品種ふじのカラマツ被害が酷いという。収穫量が5割減などという生産者もチラホラ、、、。春の時点でリンゴが実っていないのだから秋に収穫できリンゴもない。幸い当農園ではそこまでの被害ではないものの、良品果率の低下は免れない。

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農業の基本はやはり「お日様」そして「水」
例年ならば6月には梅雨入りし雨合羽を着ての摘果作業となるのだが、今年はほとんど着ていない。小雪だったこともあり、園内の土壌水分量も春先からかなり少なく、ここにきてなかなか雨が降らない、、、。りんごの肥大も鈍化したように感じる。いまの時期は来年以降の花芽形成時期でもあるので日照時間やある程度の土壌水分は必須。どんなにいい土壌でも「お日様」「水」が無ければいい作物は出来ないと改めて考える。

 

過去最速で一回目の摘果終了
今の時期、リンゴ農家は摘果作業に勤しんでいる。今年はカラマツ被害があったため実になったものが少なく、摘果作業が例年よりも早く進んだ。もちろんスタッフの摘果スピードも上がったのもある。これからはさらに一個一個吟味しながらの摘果作業をしていく。

 

仕上げ摘果も過去最速で終了
先日二回目の摘果(仕上げ摘果)も終了した。昨年に比べると10日ほど早く終了。今の段階で小さな実、変形果、傷がついたものを摘果して樹に実らせる実を調整する。6月中にすべて摘果作業を終わらせるというのが生産指導ではあるが、すべて手作業であるためなかなかそれまでに終わらせるのは厳しい。ただ今年は例年になく早く終わることができたので、来年の花芽形成も進み来年が楽しみでもある。


意識的に休むことの重要性
農家には休みがない、確かにそうかもしれない。ただ私は仕上げ摘果が終わってから早生品種の着色管理が始まる8月下旬まではゆっくりと過ごしたいと思っている。もちろん妻や母親にも休んでもらっている。農家である以上、作物の生育に合わせた管理や、天気に合わせた管理、、、一日中部屋でゴロゴロすることはないが、気持ちだけでもしっかりと休んでいる。子供のサッカーの送り迎えや試合の応援、エアコンの効いた部屋での読書、家族での外食など。今まで休みなしでひたすら仕事してきたのだから、しっかりと休んで心も体も万全にこれから来る超農繁期に備えたい。

慌ただしい春の作業とマルチタスク

暖冬小雪だった冬から、あっという間に桜の開花、リンゴの花も開花そして現在はリンゴの花も散り、少しずつリンゴの実も膨らみ始めてきました。

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りんごの花の開花までに
4月上旬に剪定作業も終わり、剪定枝の片付けや伐採した木の伐根、そして園内の排水不良だった場所に暗渠パイプをやるなど今年は準備万端に開花期を迎えた。


開花期を迎え園地は花で真っ白、園主の頭の中も真っ白

 

⚪︎次年度交配用の花取、花粉精製
準備万端で開花期を迎え、一番先に咲く王林の花から摘花開始。当農園では王林の花から次年度受粉用の花粉を採取するため一つ一つ手作業で状態のいい花を選別しながら摘花しているのだが、これがまた労力と根気のいる作業。例年であれば3日ほどこの作業をすることができるのだが、今年は開花期の気温が高かったため、一気に花が開いてしまい2日しか摘花採取できなかった。

 

⚪︎交配作業
一気に各品種花が咲いてしまったため、交配作業も並行しやらなければなりません。中心花の咲いた品種からラブタッチという機械を使用し迅速かつ丁寧に交配していく作業なのだが、これまた気の遠くなる作業で根気のいる作業。
マメコバチを使用した交配方法もあるが、当農園では数年前にすべて人の手で交配する人工授粉に切り替えた。マメコバチでの交配は労力の大幅な軽減になるが、今年はどういう訳かそのマメコバチが巣箱から出てきていないという。研究機関で調査はしているもののはっきりとした原因はまだ解明されていない。この時期にマメコバチが飛んでくれないということは交配作業がうまくいかず、花が咲いても実にならない、、、。

 

⚪︎病害虫防除の最重要時期
この時期から上記内容に加え病害虫の防除も始まります。虫は発生初期に殺虫剤を散布することでおおよそは防除でるが、リンゴの病気は目視できるようになってからでは対処が遅すぎるため、発生予察し消毒作業をしなければならない。降雨前に消毒作業をするのが基本だが、毎回毎回降雨前に散布していては経済的にも労力的にもキツイ。薬剤の特性を理解し散布することが大事。

 

⚪︎地元のコミュニティと役職
田舎に住んでいるとたくさんのコミュニティが存在していますが消防団がその代表の一つではないでしょうか。私の場合小さな村に住んでいるため、消防団との関わりも深く20代前半に入団、今では部長となっております。今年は雪解けが早く、乾燥した日が続いたため近所での林野火災も多く何度出動しただろう。自分の仕事を投げ出し、火事場へ行く。会社員ではありえない状況。火事場へ来るのは大体リンゴ農家。みんな地域を守るため自分の仕事そっちのけで消火活動している。

 


マルチタスクからの解放

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マルチタスクという言葉を改めて調べていたが、上の図の4つに分類されるらしい。
ただ、開花期のりんご農家の作業はほとんどが①に分類される。
開花期間の限られている時期の摘花花粉精製、交配作業。突然サイレンが鳴り出動要請がある消防団活動。ころころと変わる天気予報に合わせた病害虫防除。作業計画を立ててもリスケ、リスケの毎日で心身共に疲れる日々もようやく終わった。今日は1日雨予報で風も強まるということなので農休日とした。明日からはただひたすらに摘果作業に勤しもう。

りんご栽培は矛盾の克服

りんご栽培は矛盾の克服だと先輩に言われたことがあります。
当時の僕には何を言っているのだろう?そう思った記憶がある。
りんご栽培に携わり15年以上が経ち、収納した時に感じたことや、教えていただいたメモを読み返してみるとその当時に解らなかったことが今では少し理解できたように思えます。

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沢山花芽を付けるための剪定
この時期りんご農家は剪定作業に勤しむ季節です。りんごを毎年のように収穫し販売し、そのお金で生活していかなければなりません。毎年毎年りんごを安定的に実らせるということは非常に難しく、それを実現するためには剪定作業は必須となります。果樹栽培剪定の中でも最も難しいとされるりんごの剪定。篤農家と言われる人や、剪定の先生と言われる人はやはり毎年安定してりんごを生産しているように思います。
剪定の基本は「木を健全に維持すること」
ただ木を元気に維持するだけならとても簡単。しかし木を健全に維持しながら“美味しいりんご”を沢山生産していくということに剪定の技がある。りんごを沢山実らせるには沢山の花芽が必要。しかし花芽が沢山つくということは木が弱ってきたということ。沢山花芽をつけた木は弱り病気になりやすくなったりと管理が大変。
樹勢の強い木は逆に花芽が付きにくく、さらにはこういった木に実ったりんごにはコクがない。

ある程度弱らせながらもしっかり樹勢のコントロールするというところに剪定の技がある。


沢山花芽がついたら今度は沢山摘花する
たくさんの花芽をつけるために剪定したはずなのに、沢山咲いた花を今度は摘花するという矛盾。りんごの場合、4つの花株のうち1つの花株に選抜して最終的に実らせるのが基本。100個のりんごが欲しいのなら400個の花芽が必要というわけだ。そうすることで、その年のりんごの品質や、次の年以降の花芽の着生がよくなるというデータもある。過度に実らせ過ぎると、確かに次の年の花芽の付きはよくないし、その年のりんごの肥大は悪い。


美味しさの証は葉っぱなのか?
近年生産現場では、「葉取らず栽培」が劇的に増えつつある。葉取らず栽培とは、りんごの着色管理(葉取り、玉回し)作業を行わない栽培方法。太陽の光をたっぷり浴びた葉が作りだす養分を十分に蓄えた美味しいりんごが出来るという。葉を取らないため果実表面に色むらができたりするのも特徴。
しかし“美味しいりんご”を作りたいから葉取らず栽培をしている生産者は本当に極々少数だと感じている。生産現場では秋の農繁期の人手不足が深刻で秋の着色管理をしなくても良いからという理由だけで葉取らず栽培が急増している。生産者の立場からすれば全て手作業の着色管理をしなくても良いというのは多大なメリットでもある。
私自身、沢山の生産者のりんごを食べてきたという自負はある。その中で美味しい葉取らずりんごだなと客観的に思ったのは数名の生産者だけ。やはりその方たちは“美味しいりんご”を作りたいからという理由で葉取らず栽培に取り組んでいた。葉取らずりんご=おいしいりんごとは必ずしもならないが消費宣伝PRするには色むらのあるリンゴというデメリットをカバーしなければいけないので「美味しさ」を強調したPRとなってしまう。美味しさを追求するために葉取らず栽培に真剣に取り組んでいる生産者からすれば、省力のためだけに葉取らず栽培をしている生産者と同じ葉取らずリンゴとして陳列してほしくないはず。葉取らず栽培だからおいしいとPRするが現場では省力のための栽培方法という矛盾。


価格高騰による生産意欲の低下
昨年産のりんごは全国的に品薄だったため、産地市場での取引価格はずっと高値が続いている。B級品やC級品といった下位等級品でさえ聞いたことのないような高値での取引となっている。生産者側からすれば近年の資材高騰で生産経費が上がっている中、収穫量が少なかった昨年のような年は少しでも高値で取引されなければ赤字となってしまう。
ここ数年りんごの取引価格は私が始めたころに比べると1.5倍~2倍ほど高く市場取引されているように感じる。先述したように下位等級品でさえ高値で取引されているため、高値慣れした生産者の”いいりんごを作ろう”という意識が薄くなってきている生産者も多い。”いいりんご”でなくとも高値で取引されているのだから。
豊作祈願はするが、豊作貧乏という矛盾。

 

「おいしいりんご」という言葉
先日、りんご仲間の先輩が「最近の剪定会では”おいしいりんご”という言葉が聞かれなくなった」ということを言っていた。確かに。
りんご生産者である以上、おいしいりんごをどこまでも追求するのは当然だと思うが最近はそうした生産者に出会うことは少なくなったように感じる。

ただ、私の周りには「おいしいりんご」を追求している仲間や先輩が多い。改めて人に恵まれていると感じる。そういった方とのりんご談義はとても楽しくとても勉強になる。時間を忘れるほどりんご談義に花が咲きとても有意義な時間を過ごしたと感じる。そうした時間を大事にしたい。

矛盾の多いりんご産業だが、生産者はおいしいりんごを追求し、豊作でも対価で取引されるもっともっと整合性のとれた産業になってほしいと願うばかりだ。

剪定鋸と早い春

お疲れ様です。年末年始と体調を崩し強制的に長期休暇となりしっかり寝正月を堪能した園主です。おかげで体調も万全。

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剪定を楽しめるか?作業になっていないか?
さて、収穫作業も終わり、発送作業も落ち着いてきたこの頃ですが、園地での剪定作業も始まりました。例年であれば雪藪を漕いで園地まで歩いていくのですが今年は暖冬ということもあり今までに経験したことのないくらい雪が少ない。この時期例年であれば80センチほどの積雪があるのだが、今年は10~20センチほど、、、あまりにも少なすぎて少し不安。
園主が剪定作業をする上でのこだわりの一つが剪定道具。就農した年から使用している職人さんが目立てしてくれた鋸や鋏を使うこと。しかし、11月上旬突然その職人さんが亡くなった。昔気質の職人を絵にかいたような方だったが私にはとても気さくでたくさんいろんな事を教えてくれた人。当農園のリンゴを作るうえで欠かせない人の一人だったが天国へ旅立ってしまった。もっともっといろんな話を聞きたかった。もっともっとあなたの目立た鋸を使いたかった。でもいまはもう叶わない。使い込むほどに切れが良くなるあの感覚、シュッシュッと切れるあの音、鉋をかけたような切り口。楽しんで剪定出来ていた。毎日剪定作業を終えて帰ってくると鋸くずを取り、錆びないようにオイルを塗ったりと手のかかる道具たちだったがその分愛着も半端ない。昨年のように楽しめて剪定出来ているかというと、、、。
しかし、剪定作業はしなければならない大事な作業。今まで使用したことのない替え刃式の剪定鋸を使用しながら約1/3終了。

巷には、たくさんの果樹剪定用の鋸がある。ネットを調べれば何種類も。私もいくつかの商品を購入しその中で一番しっくり来たものを使用しているわけだがやはり職人さんの目立てた鋸に慣れてしまった私にはどこか違和感がある。現在使用しているものも決して切れないというわけではない。むしろ新品ならより切れているのかもしれないが、切れ味の持続性がない、、、だから替え刃式。少し残念。

縦引き用、横引き用などの大工用の鋸とは異なり、果樹用鋸というのは木の繊維に対して斜めに切ることもあったり、節が多くかたい部分と柔らかい部分が混在している木なので縦引き、横引き両方のいいとこどりの刃でなければならないと思っている。それらを可能にしていたのが職人さんだったように思う。今となってはあの感覚で剪定出来ないと思うと心から楽しめて剪定出来ていないように思うが、暖冬傾向の今年は春の訪れが早い予報なので早い春に備えてしっかり計画的に剪定進めていこうと思う。

今年の振り返り、反省色々

お疲れ様です。11月上旬から主力品種サンふじの収穫が始まり。日中は収穫、夜は荷造り作業という一年で一番忙しい日々を過ごしておりました。今日でようやくご予約分を発送し終え、少しだけ余裕のある日常に戻りつつあります。

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今年の振り返り
記録的に早い消雪、記録的に早い開花となりあわただしい幕開けとなった春。生育が早くなると遅霜の影響を受けやすく、少なからず当農園も被害を受けてしまった。しかし開花量は十分、着果量も十分、肥大も良好、今年はいい出来秋を期待できそうだと思っていた夏、30度以上の日が一ヶ月以上も続き最高気温が39.3度、、、日当たりのいい果実は焼け焦げ、畑の土は干ばつ状態になり、肥大がストップ。まあ、それでも秋になり早生品種、中生品種と収穫をしていると爆弾低気圧、、、幸い風当たりの強い園地の収穫は終えていたため落下被害は1トンほどで済むが、強風が続いた時間が長かったため枝に擦れ傷ついたりんごが多くなってしまった。サンジョナや王林の2品種は収穫前落果が1割。主力品種のサンふじは、果皮のひび割れが酷かった。
そして何よりも全品種、鳥被害が多かったというのが今年の特徴。

やっぱり信用が大事だよね
今年度よりBtoB取引を始めました。というより今までたくさんの業者さんからお声掛けいただいておりましたがすべてお断りしてきましたので今年初の試み。単価的にも満足のいく取引でさえ断ってきました。なぜかというと当農園のような個人農家が収穫できるリンゴの量なんて限られています。今まで定期的に購入していただいたお客さんのリンゴを単価がいいからと言ってそっちに行ってしまっては今まで当農園のリンゴを楽しみにしていたお客さんに申し訳ないという気持ちが強いから。こんな頑固な園主だからなかなか稼げない、、、。
しかし、リンゴ農家仲間の紹介ということもあり少量だが今年度出荷することにした。リンゴ農家仲間の顔を立てたというわけだが、来年以降はどうしようか?悩んでる。個人農家と業者、販売店というお付き合いになるわけだが私としてはサンふじの贈答品は例年完売しているので10月の早生物のリンゴから出荷したいという希望も伝えたはずだがメールしても返信はなく、10月下旬急に連絡がありバイヤーさんを連れて園地に行きたいと、、、10月下旬といえばリンゴ農家の超農繁期。この時期急に来るということが農家にとって負担になることが販売する側はわかっていない様子。実際、今年は2品種90キロ出荷したが、出荷する手間は個人宅配の倍以上かもしれない。やはり私にはBtoBというのは向いていないと実感。本来1度2度と会う度に信用だったり信頼関係が出来てくるものだと思うのだが、今年はそれを築くことができなかった私の未熟さもある。反省。

 

お客様は神様なのか?親しい友達くらいがちょうどいい
今では全国にたくさんのお客さんがいます。本当にいい人たちに恵まれリンゴを購入していただいていますが、中には”お客様は神様”という態度で電話してくる人もいる。残念だったのがその人は同じ農業者だった。他県で農業法人をされている方でここ数年リンゴを購入いただいている方。簡単に言うとその方のお口に合わなかったという電話だったが最後にはおいしいリンゴは、、、、という風に本業の私にリンゴについてマウントを取り始めた。さすがにこれにはカチンときた。反省。
お客さんに選ばなければリンゴを購入してもらえないのは重々わかっているが、ただ生産者側もお客さんを選ぶ権利はある。

私はお客さんとの立場は対等で「親しい友達くらい」の関係性がいいと思っている。実際そういう関係性が築けているなと感じるお客さんが何人もいる。もちろん直接会った方ばかりではなく、一度も会ったことがない人のほうが多い。
今年、いろんな意味で救われた出来事がある。
2~3年前から当農園のリンゴを購入していただいてる方から突然SNSメッセージがあり「当農園のリンゴで作ったタルトを贈りたい」と。リンゴを購入していただいているのにわざわざタルトを作って贈ってくれるという。心身共に疲れている時期でこのメッセージを見ただけで元気がでた。数日後予定通りタルトが到着。売り物かというほど綺麗な見た目とリンゴの味もしっかりと感じられる程よい甘さのタルトが体に染み渡った。何よりもその人の気持ちがただただ嬉しかった。今年のリンゴは夏場の猛暑や日焼けの影響で品質のいいものが少なく、気落ちしてストレスも溜まっていたころの出来事。
本当に救われました。ありがとう。
勝手に親近感が増し、勝手に「親しい友達くらい」に思っています。

 

贈答品完売と信頼関係
お陰様で、今年度の贈答品は予約の段階ですべて完売となりました。現時点で贈答品をご注文いただくお客様には下位等級の「家庭用品(色むらや傷あり)」しかありませんと伝えると、”味が変わらないならいいよ”と言ってくれるお客さんがほとんど。先に記述したように今年は猛暑の影響が大きく贈答品も例年よりも少し少なかった旨を伝えると直ぐに理解してくれ、”大変だったね”と労ってくれる。規格を変更を快諾してくれるお客さんとの間には信頼関係が出来てきていると感じる。しかし私としてはお客様の本来のご注文にお応え出来なかったという罪悪感が少なからず残り、来年こそは!と心に誓うのであった。

今年度から当農園も商品価格の値上げに踏み切りました。数年前からの肥料費、農薬費、資材費、人件費と必要経費が上がって、苦渋の決断でしたが商品価格を見直すことになりました。いろんなものが値上がりしその中で毎年当農園のリンゴを購入されているお客さんには大変申し訳ないと思いつつ来年以降も継続してリンゴをお届けするためには価格改定せざる得ませんでした。値上げしたから少し注文件数は減るだろうと思っていたが、現時点では昨年並みのご注文件数。本当にお客さんに支えられているんだなと実感。
あっという間に12月。リンゴの発送も先が見え始めてきたので、そろそろ畑へ行こうか!

猛暑からの低気圧、そして鳥さん

お疲れ様です。
ここ青森もようやく秋めいてきて、暑がりの園主でも股引きを履いて畑へ向かう季節となりました。

裸になって作業もしたいと思っていたほど暑かった夏。果実の日焼けに悪戦苦闘した夏を乗り越えてやっと気温も下がりこれ以上何もなければいいなぁと思っていたら、、、

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爆弾低気圧
「今年は台風が来ないな〜」なんて休憩中話をしていたら10月5日に低気圧が青森県上空にやってきた。夜中から明け方まで強風が続き収穫前のリンゴの落果してしまった。幸い当農園の落下被害は600~800キロほどで済んだが近所の畑ではうちの10倍ほど落果したそうだ、、、。
園地の場所によってこれほどまで差が出るのか。落下被害ばかりではない。長時間にわたり枝が揺れリンゴが擦れ傷がついたりんごも多い。市場出荷ではランクが一段も二段も下がってしまう。

幸い当農園では、多少の傷は気にしないというお客さんが多くある程度は宅配りんごとしてさばけるが、春からたくさんの苦難を乗り越えあと少しで収穫だというりんごが傷ついているのを見るとストレスが半端ない。

 

鳥の被害が深刻
夏場の猛暑の影響なのか?今年は山にも影響がありドングリが不作だという。早い時期から熊さんが人里付近まで来るようになり、自家消費用に植えてある桃も一個残らず熊さんに食べられてしまった。全県的に今年は熊さんの出没件数も例年になく多く発生しており、人的被害も報告されている。

 

低気圧や熊さんの被害も落ち着いたころ、周りの農家から「鳥の被害が深刻だ」という連絡があった。確かに管理作業をしていると例年に比べ鳥が突いた跡が今年は多いなと感じている頃だった。葉取作業をしている時期にちらほら見かけていた鳥が突いたりんごだったが、玉回しの作業になるとかなりのリンゴが突かれている、、、。毎年少なからず突かれてはいるもののここまで突かれたことは今までにない。慌てて防鳥テープを園内あちこちに張り巡らせたがあんまり効果がないということも知っている。でもやらないよりはマシだと自分に言い聞かせ今日も防鳥テープを張ってきた。
何が厄介かというと、突かれた個所から腐敗していく為、腐敗のひどいものは破棄するしかない。春から手塩にかけてきたリンゴが野鳥に一突きでもされようものなら商品としての価値がなくなるというのが一番の問題。

 

鷹を模したカイトも一時期流行したが今では一つも見かけなくなった。一番効果的なのは防鳥網を園地全域に張り巡らすのが一番だが、広大な園地に網を仕掛けるのは労力的にもコスト的にもとても現実的ではない。

こんな年は早く収穫することが鳥被害を軽減させる唯一の方法なのだが、あと数日で完熟するとわかってるりんごをここまで来て未熟なまま収穫する事は出来ない。経営者としてこの判断は間違っているともわかっているが、生産者としての判断は間違っていないはず。「昨年よりも美味しいリンゴを」をテーマに毎年掲げてる当農園としては美味しさだけは妥協出来ない。
お客さんも毎年楽しみにしてくれているという期待感もヒシヒシ伝わる。

あと数日で当農園の人気No.1サンふじの収穫も始まろうとしている。これ以上、被害が出ない事を祈るしかない。
鳥被害には、コレは効果あるというものがあれば教えて欲しい。

ロイヤルカスタマーに支えられ

お疲れ様です。超農繁期に突入です。
りんご農家は主力品種ふじの収穫が始まる11月が一番忙しいと言われますが、実は10月が一番忙しいです。中性種の着色管理や収穫に加え、ふじの着色管理も進めなければ11月の収穫に間に合いません。私の場合、それらに加え日没後の荷作り作業、それが終わったら事務作業と働き方改革とは真逆の生活となります。

現代社会では物やサービスが溢れており、情報収集の手段も多様化し圧倒的なスピードで情報が拡散され折角作ったものが模倣される時代でもあります。
沢山の農家さんが直接消費者と繋がり、簡単に販売できるという利点もあります。SNSの進化普及と共に情報のスピードというのは格段に早くなり、伝えたい事や物がうまく消費者に伝わらず沢山の情報に埋もれてしまうという事もあり、SNSの使い方は年々難しくなってきたなというのが実感としてあります。

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誰に向けての情報発信なのか?
仕事柄、園主のSNSフィードには沢山の農家さんの投稿が流れてきます。農作業の様子だったり、収穫したりんごだったり、、、、。その人が誰に向けて投稿しているのかはわかりませんが、当農園のSNS等は既存のお客さんへ向けて情報発信をしています。新規顧客開拓のために情報発信してはいませんが、それでも少なからず新規顧客獲得には繋がっています。ただあくまで既存のお客さんへ向けた投稿をしているだけ。一個のりんごが出来るまでの作業内容をメインに毎年ずっと辞めずにやってきた。ブログから始まり、facebookInstagram、Threads、note。ブログなんかは投稿頻度は低いものの、毎日数十人も閲覧しているようでこんな拙い文章のブログでも投稿を楽しみにしているんだなと嬉しくも思います。

 

ロイヤルカスタマーという存在
農作業中にはいろんなラジオを聴きながら作業をしているのですが、先日聞いたラジオで「ロイヤルカスタマー」についての話題があり、とても興味深かったので自分でも少し調べてみた。

 

 

ロイヤルカスタマーとは
ロイヤルカスタマーと似たような言葉に「優良顧客」があります。違いを理解することで、ロイヤルカスタマーについても正確に定義できます。

ロイヤルカスタマーの定義
「ロイヤル(loyal)」とは「忠誠心」、「カスタマー(customer)」とは顧客を意味します。つまり、「ロイヤルカスタマー」とは、商品やサービス、企業、ブランドに対して愛着や信頼を持っている顧客のことです。具体的には、商品やサービスをリピートして利用している顧客で、企業のファンのようなヘビーユーザーを指すといってもよいでしょう。

 

 

ネットで言葉の意味を調べているうちに、沢山のお客さんの名前が頭を巡った。当農園には沢山のロイヤルカスタマーと言われるお客さんがいる事に気づいた。


◦毎年のようにりんごを購入していただいてる他に、沢山のお客さんを紹介してくれる。
◦毎年何時間もかけてわざわざりんごを買うためだけに来てくれる
◦積極的にSNSで紹介してくれる


ここ数年は毎年のように新規のお客さんが増えてきている。SNSを利用し広告も出したりしてはいるが、「〇〇さんから紹介してもらいました」と一文添えられた注文書がよく届く。見しらぬ土地でりんごの話題となり、きっと当農園のことを紹介してくれたんだろうと。

 

例年であれば、8月20日頃にお客さんへDMを郵送しご注文受付開始となるのだが、一日早くオンラインショップのカートは開けるようにしてある。これはスムーズに受注できるか?最終確認のために一日余裕を持って開けるようにしているのですが、何もこちらからアナウンスせずともその日に数件の注文が入る。これは毎日毎日オンラインショップを確認しているからに違いない。逆の立場で考えるとなかなかの労力だと思う。そこまでして毎年楽しみにしていただいていると思うと、絶対に期待以上のりんごをお届けしたいと思う。それが私の出来る唯一の恩返し。

 

美味しさの先にあるものは
「美味しい」という言葉は溢れている現代において、私の考える本当の美味しさは”お客さんとの信頼”の上にあるのかもしれない。そう考えるようになってきた。

潜在顧客よりも、見込み顧客よりも、新規顧客よりも、リピーター、よりもロイヤルカスタマーと信頼度が高くなってくる。本当の信頼を得るためには時間がかかる。その反対に信頼を無くすには一瞬。
話は変わるが、私の同級生ですし職人をやっている友人がいる。その彼はたくさんの修行をしてきて、数年前にようやく自分の店をオープンさせた。決して広くはない店内だが、平日でも満席、週末はなかなか予約は取れない地元では一気に人気店に急成長した。やっぱりそれは大将の人柄や今まで築いてきた信頼があるから。もちろん味は言うことなしという前提。業種が違えど彼に学ぶ事は多い。私もそんな彼のお店にとってのロイヤルカスタマーだろう。

 

初めての経験
当農園は地元の直売施設にも少量ながら出荷をしている。その直売施設ではバーコードに生産者の名前が記載されていて誰が生産しているのかということが分かるようになっている。基本的に規格外品を出荷しているのだが、今では指名買いいただくまでになったが、そこでの常連さんがわざわざ名前からネット検索し当農園までお越しいただいたことがある。毎年毎年、産直施設で指名買いしていたそうで、いつかは私に会いたいというお言葉までいただき、先日お会いすることが出来た。生産者としてこんな嬉しい事はない。私に会うことが夢だったとまで言われ私の作ったりんごがここまで人の心を動かすことが出来たという実感と今までやってきたことが間違ってなかったという確信を得た出来事でした。

 

今まで沢山のお客さんにお会いし、まだまだ直接お会いしたことないお客さんも多いがロイヤルカスタマーと言われるお客さんには直接お会いし「ありがとう」と一言直接伝えたい。