りんごの花も満開

全国各地、今年は春の訪れが早くあっという間に桜の花も散りました。
桜の開花から7〜10日ほどでりんごの花が咲くと言われていますが、早咲きの桜だということはもちろんりんごの花も早いわけで、私が就農してから最速の開花となりました。

 

生産者の技量を測る
この時期、私の住む地域はりんごの花一色となります。見渡す限りのりんご畑。
しかしながら、花が咲いていない又は極端に花が少ない園地もチラホラ見られます。花が咲かないことにはりんごは実りません。極端に花が少ないと通常実らせてはいけないような場所にも実をつけなければいけなくなり、結果秋に良品は見込めません。毎年花を咲かせる技術は生産者の技量の一つだとも言えます。

 


満開のりんごの花

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りんごの木の下で花見
りんごの木下で花見でも出来ればいいのですが、この時期りんご農家にとってとても重要な時期なので遊んでる暇はありません。


◦来年受粉用の花粉採取
◦病害虫防除の重要時期
◦摘花
◦交配作業
主な作業内容は上記の4つとなります。

 

まずは、来年受粉用の花粉の採取。
当農園では主に「王林」「シナノゴールド」の花を摘み取ります。風船状に膨らんできた花を選びながら全て手作業でコツコツと集め、その日のうちに脱葯機という機械で葯だけにし、開葯し来年使用する時まで冷蔵保管しておきます。

 

りんごの開花期というのは、ものすごくデリケートな時期で病気にもかかりやすい時期となります。春に病気になった病班は秋になって収穫時期になっても消えることはなく、病気になってしまってからは遅いというのが怖いところ。病気のほとんどがカビや細菌などで目に見えないので防除するには予防するしかないのが現状。天気予報を何度も見ては、雨や気温などから菌が飛散しそうな日の前に消毒することが基本。この時期に適切に防除することで後々の防除が楽になり散布量の軽減にもつながります。

 

春の一大作業といえば、摘花。先にも記載したように花を毎年沢山咲かせるのは生産者の技量。沢山咲かせた花を今度は沢山摘花します。なんだか矛盾しているようにも思いますが、いいんです。沢山咲かせた花を今度は沢山摘花し沢山実らせます。沢山咲かせるとで、いい花、悪い花を瞬時に見極め摘み取ります。いい花ばかり残すというわけでもなく、いい花ばかりあったとしても適度に摘み取ります。そうすることで今年のりんごの肥大や来年の花芽形成への養分が周り、来年度も沢山の花を咲かせてくれます。

 

そして何と言っても大事な作業が交配作業。りんごは自家受粉できない植物なので一個のりんごが実るには他の品種の花粉が必要となります。「ふじ」には「王林」、「つがる」には「シナノゴールド」といったように。数年前まではマメコバチを飼育し開花期に放してのハチ任せの交配でした。しかし花が咲いていいタイミングでハチが出てこなかったりして不受精果が多くなり、これではダメだと思い三年前からは全て人工授粉を行うことしました。満開に咲いた花一つ一つに確実に交配していくわけですから気の遠くなるような作業です。りんごの花のメシベの受精能力は条件がよくて5日あると言われていますがあくまでも条件がいい場合。今年のように風が強ければメシベの柱頭が乾燥し乾き、受精能力も短くなるので交配作業にはスピード感も求められます。もちろんスタッフ総出。朝から日が沈み見えなくなるまで「私はミツバチだ」と言い聞かせ交配作業。

 

延4日間、交配作業に費やしました。周りの農家にはそこまでやるか?などと言われますが、1年に1回しか収穫できないのでその年その年の最善を尽くし、自分で納得できる仕事をして秋を迎えたい。あの時こうしておけばよかった、あーしておけばよかったでは一年無駄にしてしまう。仮に秋にいいりんごが出来なかったとしても精一杯管理してきた結果ならきっと自分ですぐに納得できるはず。すぐに反省、改善できる。

と、こんな感じで開花期のりんご農家はものすごく忙しいのです。
現在、園内では落花も始まり、りんごの幼果期へと移行してきます。しっかり受精したりんごの花は落花も早く、今年は順調に生育してほしいと願うばかりです。
忙しい忙しいといっているに流石に今日は休んだ。雨で最高気温も一桁台、、、この時期にこれだけ気温が下がるのはなかなかない。これからの果てしない摘果作業に備えて今日はゆっくりと休もう。